次亜塩素酸水の効果が出る濃度と有効時間(期間)

次亜塩素酸水

自宅の消毒や除菌に興味がある人の中には、効果に必要な濃度や時間について気になっている人もいるのではないでしょうか?

この記事では、厚生労働省の報告書を参考に、次亜塩素酸水の適切な濃度や時間について紹介します。

次亜塩素酸水とは?

次亜塩素酸水は、塩素や食塩水を電気分解するとできる水溶液です。次亜塩素酸水には、殺菌成分である次亜塩素酸を多く含むため、食品や物品の消毒剤・除菌剤として注目されています。

よく似たものに、次亜塩素酸ナトリウムがあります。次亜塩素酸ナトリウムは、ハイターなど家庭用塩素剤に含まれる成分。次亜塩素酸ナトリウムも殺菌成分である次亜塩素酸を含みますが、取り扱いが全くことなるので、違うものと考えておいたほうがよいです。

次亜塩素酸水の種類と定義について

濃度別に次亜塩素酸水の呼び方が変わってきます。
その定義は以下の通りです。濃度を調節するために製法が若干ことなるのですが、基本的にやっていることは変わりません。
※化学的な専門的な内容ですので、この章は飛ばし読みしてもらっても構いません。

① 強酸性次亜塩素酸水

0.2%以下の食塩水を有隔膜で分離しながら電解分解して、プラスの電極側から得られたものをいいます。
強酸性の次亜塩素酸水は、塩素を20~60㎎/㎏含んでおり、pH2.7以下になります。

② 弱酸性次亜塩素酸水

食塩水を有隔膜で分離しながら電気分解して、プラスの電極から得られる水溶液とマイナスの電極に発生した水溶液を加えたものになります。
弱酸性の次亜塩素酸水は、塩素を10~60㎎/㎏含んでおり、pHは2.7から5.0になります。

③ 微酸性次亜塩素酸水

3%以下の塩酸と5%以下の食塩水を加えて濃度を調節した水溶液を、有隔膜なしに電解分解して得られるものをいいます。
微酸性の次亜塩素酸水は、塩素10~80㎎/㎏を含んでおり、pHの数値は5.0から6.5です。

次亜塩素酸水が殺菌効果を発揮する濃度と時間

家庭用の消毒剤や除菌剤として使われている次亜塩素酸水は、酸性度の低い微酸性次亜塩素酸水です。

微酸性次亜塩素酸水の塩素濃度は、10~80㎎/㎏と幅があります。
厚生労働省の報告によれば、濃度ごとの微酸性次亜塩素酸水の効果には以下のようになりました。

  • 塩素濃度30㎎/㎏の微酸性の次亜塩素酸水は、耐久性の高い菌(有芽胞菌)に対しての殺菌効果が低かった。
  • 塩素濃度50㎎/㎏の微酸性次亜塩素酸水は、耐久性の高い菌(有芽胞菌)に対して、殺菌効果があった。

このように、次亜塩素酸水の細菌に対する殺菌効果が、塩素濃度によって異なります。

以降では、殺菌効果が高かった50㎎/㎏の微酸性次亜塩素酸水の殺菌効果について見ていきましょう。

塩素濃度およそ50㎎/㎏の微酸性の次亜塩素酸水の殺菌効果・時間

厚生労働省が行った実験では、塩素濃度57㎎/㎏の微酸性の次亜塩素酸水を使って、さまざまな微生物に対する殺菌効果が確認されました。

  • 培養した微生物(大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA、サルモネラ菌、緑膿菌、レンサ球菌、枯草菌、カンジダ、黒コウジカビ)に、上記の濃度の微酸性次亜塩素酸水を浸し、時間経過ともに微生物の数を確認した。
  • 枯草菌以外の微生物は、1分でほとんど死滅した。枯草菌は3分後にほぼ死滅した。

上記の実験から、塩素濃度50㎎/㎏の微酸性の次亜塩素酸水は、多くの微生物に対して、殺菌効果があることが分かります。
※別の調査には、ノロウイルスやインフルエンザウイルスに抗菌性をもつとされています。
さらにこの実験では、そのほかの殺菌剤との比較も行われているので、見ていきます。

そのほかの消毒剤・殺菌剤との比較

比較のための実験で使われているのが、塩化ベンザルコニウム 0.05%(500 mg/kg)、次亜塩素酸ナトリウム200㎎/㎏です。

商品名で言うと、前者がオスバン、後者がハイターやピューラックスになります。
比較実験の結果は、以下のようになりました。

・枯草菌の殺菌効果がみられたのは、微酸性の次亜塩素酸水のみで、塩化ベンザルコニウムと次亜塩素酸ナトリウムは、殺菌効果がみられなかった。
・黒コウジカビの殺菌効果を比較すると、塩化ベンザルコニウムと次亜塩素酸ナトリウムに比べて、微酸性次亜塩素酸水の効果が高かった。

上記から、微酸性次亜塩素酸水は濃度が低くても、そのほかの一般的な消毒剤や殺菌剤よりも、高い効果を発揮できることが分かります。

食品消毒における次亜塩素酸水の効果

次亜塩素酸水は食品の消毒のための添加物としても使われています。食品の殺菌には、物品の消毒よりも低い濃度のものが使われます。厚生労働省の実験によると、以下のことが判明しています。

  • 食品の消毒効果をみるため、弱酸性の次亜塩素酸水(塩素濃度20㎎/㎏、pH3から5)を使用。キャベツ、リンゴ、鶏肉、卵、アジ(魚)のそれぞれの食品に、弱酸性次亜塩素酸水の流水で30秒間洗った。
  • 90~99%の食品に殺菌効果がみられた。

 

次亜塩素酸水による食品の消毒は体に害がないか?

身体に害はない

次亜塩素酸水による食品消毒は表面を洗うもので、食品に混ぜ込んだり、内部に注入するものではありません。
また、基本的に食品を次亜塩素酸水で消毒したあとは、水道水ですすぎ洗いをするため、化学成分が残りません。

たとえば、次亜塩素酸水が消毒でよく使われるものに、スーパーで売られているカット野菜やコンビニのサラダがあります。食の安全に気を遣っている人のなかには「カット野菜やコンビニのサラダは塩素漬け」という内容を聞いたことがある人もいるでしょう。

正確には、これらの食品に消毒として使われているのは、次亜塩素酸水で、人体に害があるものではありません。次亜塩素酸水で消毒するとき、塩素のにおいがするため、このような噂が広がった可能性があります。

 

次亜塩素酸水で食品を消毒すると栄養素が壊れる?

次亜塩素酸水を使って食べ物の殺菌をすると、栄養素が壊れてしまうのではないかと気になる人もいるでしょう。

たとえば、酸性の強い次亜塩素酸水に食品をつけると、カット野菜からは水分がにじんで、栄養素が抜けたり劣化したりする可能性があります。

一方、弱酸性の次亜塩素酸水の場合、野菜から染み出る水分も少なく、劣化の可能性は低くなります。それと同時に効果的に殺菌することができます。多少は壊れるものの、大きな影響はなさそうといえます。
 

参考文献

次亜塩素酸水 除菌ラボ編集部では、厚生労働省の提供資料および信頼性の高い論文に基づいたコンテンツ制作を行っております。
※1:厚生労働省/次亜塩素酸水/
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf
※2:厚生労働省/ノロウイルスの不活化条件に関する調査/
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000125854.pdf
※3:厚生労働省/次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性 に関する資料/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8k.pdf

(制作・編集:次亜塩素酸水 除菌ラボ編集部)