感染予防や消臭のために、次亜塩素酸水を加湿器にセットしようと考えている人もいるのではないでしょうか?
実際に次亜塩素酸水を使うとき、効果や安全性について気になりますよね。
この記事では、加湿器で次亜塩素酸水を使うときのあれこれについて記載しています。
目次
次亜塩素酸水とはどんなもの?
次亜塩素酸水は食塩水や塩酸を電気分解することによって作られる水溶液です。次亜塩素酸水には、「次亜塩素酸」と呼ばれる除菌成分が含まれています。次亜塩素酸は、人体の白血球でも作られている物質です。
次亜塩素酸水は食品や物品の除菌など、幅広く使うことができます※1、※2。
弱酸性で人体に有害性がなく、そのほかの消毒や除菌剤と比較して安心して使えるというメリットがあります。
加湿器にも次亜塩素酸水が使える?
次亜塩素酸水を使う人が増えている中で、空間噴霧に使いたいという方もいます。特に加湿器にセットして使いたいと思われる方が多いのではないでしょうか?
次亜塩素酸水を加湿器に入れて使うこと推奨されていません。
- WHOなどの報告によると空間噴霧は推奨されていない ※3
- もし使う場合でも、家庭用の加湿器は塩素に強い仕様となっていないため、専用のものが必要
という状況であることを理解して、完全に自己責任で利用する必要があります。
加湿器で次亜塩素酸水を使うことが推奨されていない理由
次亜塩素酸水は、多くの分野で使われおり、その安全性は消臭効果についても議論されてきました。
- ラットを使った実験では、次亜塩素酸水の吸入により、健康に害がないことが確認されています。※4
- 消臭効果についても効果が認められております。消臭効果には、いくつかの種類がありますが、次亜塩素酸はニオイの元とくっついて分解するタイプの商品です。※5
- ニオイをごまかすのではなく、ニオイの元にアプローチできます。 特に、アンモニアなどへの消臭効果がある※6ので、ペットや排泄物などによるニオイにも効果的です。
上記のことから、除菌効果、消臭効果のために加湿器をつかって、空間噴出したらいいのでは?と考える人もいらっしゃると思います。
ただし、加湿器をつかって空間噴出して効果的であるという事実は今の所存在しません。
加えて、各保険機関の見解によると、噴霧は推奨されておりません。
① WHOの見解
以下にWHOからの報告内容を抜粋します(※3参照)
「COVID-19 について、噴霧や燻蒸による環境表面への消毒剤の日常的な使用は推奨されない」 とする。さらに、「消毒剤を人体に噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されない。これ は、肉体的にも精神的にも有害である可能性があり、感染者の飛沫や接触によるウイルス感染力 を低下させることにはならない」
② 米国疾病予防管理センター(CDC)の見解
医療現場の消毒に係る一般論として「消毒剤噴霧は、空気や表面の除染のためには不十分な方 法であり」、「一般感染管理には推奨されない」としている。
※もし仮に次亜塩素酸水を加湿器で使うときのポイント・注意点
利用したい場合、完全に自己責任となっている加湿器での次亜塩素酸水の使用ですが、使うとしても注意点がいくつか存在しています。
ポイント① 加湿器は超音波式で
加湿器に次亜塩素酸水をセットするときは、かならず超音波方式のものを選びましょう!
なぜかというと、超音波式以外のものは次亜塩素酸水の効果を低下させてしまうからです。
※ 水を蒸気化する加湿器には、以下のようなの種類があります
- 加熱式:ヒーターで水を加熱して蒸気化する
- 超音波式:超音波の力で水を振動させて細かい粒子にする
- 気化式:水を通したファンに、送風して細かい粒子にする
- ハイブリッド式:上記の方式を組み合わせたもの
次亜塩素酸水は高温で効果が低くなるため、加熱式やハイブリッド式はおすすめできません。また、気化式はフィルターに染み込ませてからの加湿となるため、効率が低くなってしまいます。
※使えないわけではないですが、効率がやや下がってしまうため、おすすめはいたしません。
ポイント② 加湿器のお手入れが必要
次亜塩素酸水は殺菌効果があるため雑菌の繁殖を防ぐことができます。そのため、加湿器の手入れが不要と考えている人もいるかもしれません。実際に、次亜塩素酸水は密封容器であれば、2週間は除菌効果が持続します。
ただし、これは次亜塩素酸水を清潔な状態で保存している場合になります。
次亜塩素酸水は、汚れ(有機物由来)を分解すると水になってしまうため、濃度が低下する、すなわち効果が下がります。
加湿器に次亜塩素酸水を使うときには、日ごろの手入れを行うことも大切です。
通常の加湿器と同じように、1週間に1度の掃除を行うとよいでしょう。
ポイント③ ハイターを薄めたもの(次亜塩素酸ナトリウム液)は入れない
加湿器に次亜塩素酸水をセットするときに注意したいのが、次亜塩素酸水ではないものを入れてしまうことです。次亜塩素酸水とよく間違われやすいのが「次亜塩素酸ナトリウム液」です。
次亜塩素酸ナトリウム液は、キッチンハイターやカビキラーなど家庭用塩素系消毒剤に使われています。
次亜塩素酸ナトリウム液も、同じ殺菌成分である次亜塩素酸を含みますが、性質が異なるものです。絶対に次亜塩素酸ナトリウム液を加湿器に入れて使わないでください。
次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性であるため、皮膚や粘膜にダメージを与える可能性があります。
誤って、加湿器にハイターの希釈液を噴射すれば、目や皮膚に刺激を感じたり、肺に炎症を引き起こしたりする危険性があります。また、次亜塩素酸ナトリウムは腐食性があるため、加湿器も劣化しやすくなります。くれぐれも加湿器にハイター等を薄めたものを入れないようにしてください。
加湿器では使用せずスプレー式の次亜塩素酸水を使ってほしい
加湿器で次亜塩素酸水を使うことは推奨されないことがわかりました。
一方で、次亜塩素酸水自体に効果がないわけではありません。スプレー式のものなどを使って、除菌すること自体には問題はないのです。
加湿器では使用せず、しっかりと掃除することが重要です。
参考文献
次亜塩素酸水 除菌ラボ編集部では、厚生労働省の提供資料および信頼性の高い論文に基づいたコンテンツ制作を行っております。
※1:厚生労働省/次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性 に関する資料/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8k.pdf
※2:厚生労働省/次亜塩素酸水/
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf
※3:新型コロナウイルス対策における「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート) https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-3.pdf
※4:安定化次亜塩素酸水を基盤とする畜産分野における 衛生管理・防疫対策への応用:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsam1937/65/1/65_1_27/_pdf
※5:日本生物工学会/談話室:次亜塩素酸が実現する安全安心空間/
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9207/9207_danwa.pdf
※6:弱酸性次亜塩素酸水溶液のアンモニアに対する消臭効果/
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/56031/20180522171700500345/poalas_034_036.pdf
※7:厚生労働省/社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/000619845.pdf
(制作・編集:次亜塩素酸水 除菌ラボ編集部)