次亜塩素酸水とアルコール消毒の違いは?比較と使い分けのポイント

次亜塩素酸水

自宅や職場での消毒や除菌を身近に行っている人もいるでしょう。市販の消毒剤や除菌剤には色々な種類がありますが、それぞれ特徴や効果が異なります。
市販の消毒や除菌によく使われる製品のひとつがアルコール消毒液です。この記事では、アルコール消毒剤と次亜塩素酸水の特徴を比較していきます。

アルコール消毒とは?特徴について

古くから、アルコールには消毒効果があることが知られてきました。
現在、アルコールは消毒や殺菌、食品の除菌や保存などさまざまな目的で使われています。

殺菌や消毒に使われるアルコールは、主にエタノールが使われます。日常的によく使われている消毒剤にアルコールジェルがあります。アルコールジェルを手にしたことの中には「70%」という数字を目にしたことがある人も多いでしょう。

この数字はアルコールジェルに含まれているエタノールの濃度を指します。少し意外かもしれませんが、アルコール消毒では、エタノール濃度が高いほど消毒効果が高いというわけではありません。

たとえば、エタノール濃度は80%以上になると、細菌の死滅時間がかえって長くなります。
効率よく殺菌や消毒するのに必要なアルコール濃度が70%とされています※1

次亜塩素酸水とは?特徴について

スーパーやドラッグストアでさまざまな消毒や除菌の商品を見かけるなか、次亜塩素酸水を目にしたことのある人もいるでしょう。次亜塩素酸水は「次亜塩塩素酸」という殺菌成分を持つ水溶液です。

よく似た名前のものに、「次亜塩素酸ナトリウム液(ハイターを薄めたものなど)」がありますが、主成分は同じであるものの、性質に違いがあります。

次亜塩素酸水は、塩酸や食塩水を電気分解して生成されるものです。弱酸性であるため、皮膚や物品にダメージを与える心配がありません。

次亜塩素酸水は安全に使える除菌剤として注目を集めてる製品です。

アルコール消毒と次亜塩素酸水の違いについて

アルコール消毒剤も次亜塩素酸水もさまざまな効果があります。

色々な消毒や除菌の製品がある中で、どのような違いがあるのか気になる人もいるでしょう。ここでは、アルコール消毒剤と次亜塩素酸水の違いについて見ていきます。

違い① 消毒や除菌の仕組み

アルコール消毒剤は、ウイルスや細菌のタンパク質を変性させる効果があります。一方、次亜塩素酸水は次亜塩素酸による酸化反応により、除菌を行います。

違い② 皮膚への刺激

アルコール消毒剤は皮膚への刺激や皮脂を取り除く作用があります。そのため、頻回に使うことで手荒れを引き起こす原因になることも。次亜塩素酸水は弱酸性であるため、素肌にも優しいのが特徴です。

違い③ 保存方法

アルコール消毒剤は引火しやすいので、火の近く以外に保存が必要です。一方、次亜塩素酸水は紫外線によって有効成分が分解されるので、直射日光を避けての保存が必要です。

保存期間については、製品によっても異なりますが、アルコール消毒剤が2~3年、次亜塩素酸水が3カ月から半年となります(未開封の場合)。

違い④ ノロウイルスへの効果

アルコール消毒では幅広いウイルスに対して消毒することが可能ですが、ノロウイルスへの効果だけは、やや弱いとされています(30秒以上当て続けないといけない)

一方次亜塩素酸水では、ノロウイルスを不活性にする報告※3がなされており、ノロウイルスへの効果は大きいと言えます。

違い⑤ エビデンスの多少

アルコール消毒は、古くから研究がなされているため、その消毒効果においては研究によって証明されている部分が大きいです。消毒を考える場合にまずアルコール消毒が用いられるのは、証明されている部分が大きいからとも言えるでしょう。

次亜塩素酸水については、下図(厚生労働省HP内にある「次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性 に関する資料」より引用)によると、次亜塩素酸水は、ハイターなどを薄めて作る次亜塩素酸ナトリウム液に類似しており、効果があることが認められています※1

効果が認められていますが、近年誕生した除菌剤であるため、証明が完了していない部分もあります。

今後の研究によっては、効果がないケースも見られるかもしれませんが、上図に記載されたウイルスに効果があるのであれば、日常生活における除菌に困ることはないでしょう。

シーンごとにアルコール消毒と次亜塩素酸水を使い分ける方法

日常生活の中で、消毒や除菌が必要になる場面は多くあります。以下に、次亜塩素酸水が効果的なシーンについて紹介します。

火周りの消毒に

アルコール消毒で意外と忘れやすいのが、引火の危険性です。コンロのなどの消毒をする際にアルコール商品を使うと、引火して火災の原因になる危険があります。
コンロなど火回りで消毒をするときは、次亜塩素酸水を使うのもよいでしょう。なお、火の近くでアルコール消毒剤を使うときは、アルコール成分が揮発してから火をつけるようにしてください。

タバコを吸っている人の手の除菌に

コンロでの引火と同じ理由で、ふだんタバコを吸っている人も注意したいところです。
アルコールジェルで手の消毒をした後は、十分乾かすことが大切です。アルコール成分が蒸発しないうちに、手に取ったタバコに火をつけると、引火する危険が高いです。
アルコールジェルで手を消毒するのなら、きちんと乾かしてからタバコを吸うようにしましょう。また喫煙者の方は、最初から引火の心配がない次亜塩素酸水で手の除菌をするのもおすすめです。

手荒れ時の消毒に

ウイルス感染の多い時期に、手をアルコール消毒する人も多いでしょう。アルコール消毒剤は、皮脂を取り除く作用があります。そのため、アルコール消毒剤を頻繁に使っていると、手が荒れてしまうことがあります。

アルコール消毒剤は皮膚への刺激作用もあるので、手荒れの時に使うのは難しいものです。なんらかの理由で手荒れがある人や、手の消毒剤に次亜塩素酸水を使うとよいでしょう。
次亜塩素酸水による敏感肌など生まれつき皮膚が弱い人にもおすすめです。

アルコールアレルギーのある人に

アレルギーの原因となる物質には色々ありますが、アルコールに対して症状が現れる人もいます。アルコール過敏症は、生まれつき「アルデヒド」という物質が分解しにくい体質であることによって起こります。アルデヒドは、アルコールの分解過程で作られる物質です。

アルコール過敏症というと、お酒に弱い人をイメ―ジしがちですが、アルコール消毒に対してもアレルギー症状が起こることがあります。アレルギーなどの理由でアルコール消毒剤を使えない人は、次亜塩素酸水を使ってみるのもよいでしょう。

ノロウイルスなどの対策に

アルコール消毒剤というと、さまざまな細菌やウイルスに効果があるイメ―ジがありますが、例外もあります。

アルコール消毒剤はノロウイルスやロタウイルスには、高い効果を期待できません。上記の感染症にかかっている場合は、次亜塩素酸による消毒が効果的です。
自分や家族がノロウイルスやロタウイルスにかかっている場合は、次亜塩素酸水で消毒してみるのもよいでしょう。

参考文献

次亜塩素酸水除菌ラボ編集部では、厚生労働省の提供資料および信頼性の高い論文に基づいたコンテンツ制作を行っております。
※1:厚生労働省/次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性
に関する資料/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8k.pdf
※2:エタノールの最適除菌濃度について(日本洗浄剤衛生協会)

ethanol.html


※2:アルコールと殺菌の話(花王)
https://www.kao.co.jp/pro/hospital/pdf/08/08_05.pdf
※3:ノロウイルスの不活化条件に関する調査(国立医薬品食品衛生研究所)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000125854.pdf