次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム液の違いとは?ハイターとは違う

次亜塩素酸水

近年、消毒剤や除菌剤として注目されている次亜塩素酸水。家庭や職場で次亜塩素酸水を使おうと考えている人の中には、家庭用の塩素系消毒剤(ハイターなど)と同じ物と考えている人も少なくありません。

この記事では、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム液の違いについて紹介します。次亜塩素酸水に興味がある人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

次亜塩素酸水と次亜塩素ナトリウム液について

次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムについて、両者を同じものと考えている人もいるでしょう。よく似た2つの名前のものですが、共通点はあるものの、性質が異なるものです。※1
以降では、次亜塩素酸水と次亜塩素ナトリウムがどんなものかみていきましょう。

次亜塩素酸水について

次亜塩素酸水は、塩酸や食塩水を電気分解して作る水溶液です。次亜塩素酸水には、殺菌成分の「次亜塩素酸」が含まれており、これまで食品の消毒や物品の除菌などに用いられています。

次亜塩素酸ナトリウムについて

次亜塩素酸ナトリウム液は、塩素系殺菌剤のひとつです。家庭でも日常的に使われており、ハイター®やカビキラー®などおなじみの製品のことを指します。次亜塩素ナトリウムにも、殺菌成分である次亜塩素酸が含まれています。

次亜塩素水と次亜塩素酸ナトリウムは、ともに同じ殺菌成分を含むことが共通しています。厚生労働省の資料でも、インフルエンザやノロウイルスなど同じような菌・ウイルスに対して効果があることが実証されています※1。

一方、両者には違いがあります。次章以下で見ていきましょう。

次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違いは?

違い① pH(ペーハー)が異なる

次亜塩素酸水は弱酸性の性質を持つのに対して、次亜塩素ナトリウムは強アルカリの性質を持ちます。弱酸性は肌と同じpHであるため、皮膚にダメージを与えることがありません。一方、強いアルカリ性は金属を腐食させたり、皮膚を化学やけどさせたりする作用があります。

次亜塩素酸ナトリウム液をつかって消毒したことがある方は、手が荒れてしまったりした方もいらっしゃるはずです。また目に入らないように注意して使用するよう記載がなされていたりします。

このように次亜塩素酸ナトリウムを使うときは、扱いにも注意が必要です。

違い② 成分の形態が異なる

次亜塩素酸水と次亜塩素ナトリウムの成分が「次亜塩素酸」です。次亜塩素酸は、幅広いウイルスや菌への殺菌効果があることで知られています。

次亜塩素酸の形態はpHによって異なります。強アルカリである次亜塩素酸ナトリウムでは、次亜塩素酸はイオンの状態で存在します。

一方、弱酸性である次亜塩素酸水に含まれる次亜塩素酸は、安定した状態で存在しています。

違い③ 使用方法が異なる

一般に、ハイターなど家庭で使われている次亜塩素ナトリウムはそのまま使うことはできません。次亜塩素ナトリウムは強アルカリの性質を持つため、対象物にダメージを与えてしまうためです。家庭で次亜塩素ナトリウムを使う場合、用途ごとに水で希釈する必要があります。

次亜塩素酸水も用途ごとに最適な濃度はあるものの、商品化されているものであればそのまま使うことができます。思い立ったときに、サッと使えるのが次亜塩素酸水の魅力です。

次亜塩素酸ナトリウムではなく次亜塩素酸水を使うメリット

次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリムは、同じ殺菌成分を含みます。しかしながら、両者の性質は異なるため、扱いやすさに差があります。次亜塩素酸ナトリウムの代わりに次亜塩素酸水を使うメリットには、以下のものがあります。

メリット① 希釈の必要がない

次亜塩素酸ナトリウムは薄めて使う必要がありますが、次亜塩素酸水はそのまま使うことが可能です。

メリット② 手荒れの心配が低い

次亜塩素酸ナトリウムは強いアルカリの性質を持つため、直接触れると手がやけどのような状態になります。そのため、次亜塩素酸ナトリウムを使うときには、手袋をするよう注意書きがなされています。

一方、次亜塩素酸水は肌と同じ弱酸性であるため、皮膚を傷つける心配がありません。次亜塩素酸ナトリウムは手の消毒には使えませんが、次亜塩素酸水は可能です。

メリット③ 消毒後に水拭きの必要がない

次亜塩素酸ナトリウムで物品の除菌をした後は、その後水洗いや水拭きをする必要があります。次亜塩素酸ナトリウムは、金属など腐食させる作用があるため、付着した部分をダメにしてしまう可能性が高いからです。

一方、次亜塩素酸水は汚れと接触すると、水に変化する性質を持ちます。そのため、消毒や除菌後は、二度洗いや二度拭きの手間がかかりません。

メリット④ 事故のリスクが低い

家庭で消毒剤や除菌剤を常備しているときに注意したいのが、事故です。次亜塩素酸ナトリウムは、酸性タイプのクリーナーや酢など酸性製剤と混ぜると化学反応が起こり有毒ガスを発生します。

そのほかにも、小さいお子様が誤って飲んでしまう誤飲事故も報告されています。家庭で次亜塩素酸ナトリウムを保存するときは、細心の注意が必要です。

次亜塩素酸水は弱酸性であるため、保存に関してそれほど神経を尖らせる必要はありません。仮に次亜塩素酸水を飲み込んでしまっても、心配はありません。食品添加物としても広く使われているため安心して使用することができます。※2

メリット⑤ 使い方にバリエーションがある

物品の除菌や漂白に使われる次亜塩素酸ナトリウムは、ひたしたり、拭き掃除に使ったりします。

次亜塩素酸水は用途が幅広く、拭き掃除以外にもさまざまな使い方が可能です。ペットの消臭を目的に手足や毛などに直接噴射する方法もあります。また、超音波式の加湿器にセットして、空間の消臭や除菌効果にも使えます。
※次亜塩素酸ナトリウムは、皮膚や粘膜に害があるので、このような使い方はできません。

注意:次亜塩素酸ナトリウムを薄めても次亜塩素酸水にはならない

次亜塩素酸ナトリウムよりも使いやすい次亜塩素酸水は、近年注目されています。家庭や職場の除菌や消毒にも手軽に使えることから、次亜塩素酸水を手作りしようと考えている人もいるでしょう。

これまでの記事を読んだ方なら分かることですが、両者は共通点があるものの、同じものではありません。そのため、家庭でみられる次亜塩素酸ナトリウムであるハイター等の塩素系消毒剤を水で薄めても、次亜塩素酸水と同じように使うことはできません。

次亜塩素酸水と次亜塩素ナトリウムを混同して、希釈したハイター等を空間に噴射したり、手の消毒に使ったりしないよう、くれぐれも注意しましょう。

なお、家庭や職場で次亜塩素酸水をふんだんに使う場合は、専門の機器が必要になります。一方で、専門機器は初期コストがかかるというデメリットがあります。また、自作の次亜塩素酸水の塩素濃度は一定にならないので、思うような効果が得られない可能性もあります。

毎日の消毒や除菌に次亜塩素酸水を取り入れるなら、市販の商品を購入するのがおすすめです。

参考文献

次亜塩素酸水除菌ラボ編集部では、厚生労働省の提供資料および信頼性の高い論文に基づいたコンテンツ制作を行っております。

※1:厚生労働省/次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性
に関する資料/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8k.pdf
※2:厚生労働省/次亜塩素酸水/
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

(制作・編集:次亜塩素酸水除菌ラボ編集部)